メディアテクノロジーラボはこうして生まれた ~巨大組織に新規事業の土壌を作る~

長友 肇(株式会社ゼログラ 代表取締役)

2014/08/25

キャリアの出発点はリクルートの情報システム部門です。元々この会社面白そうだなと思って入社した経緯があるんで、そこまで部署にこだわりはありませんでした。ちなみに、面接のときにお会いしたのがいまのコロプラの副社長の千葉功太郎さん。当時ISIZEを担当されていて、話を伺って面白い!と思って入社したのですが、入ってみたら翌年彼は辞めていました(笑)。

システムの知識は趣味程度にはあって、学生の頃もコードを書いていました。ただ、C言語のポインタがどうしても理解できず挫折。これは仕事には向かないなあと思っていたところでの情報システム部。最初に携わった案件はけっこう大物でしたね。ちょうど転職サイトの『デジタルビーイング』と『シムキャリア』が 統合するタイミング。いまのリクナビネクストに続くサービスです。開発はインドで行うといういきなりのオフショア案件でした。

その後、元々企画をやりたかったということもあって2年ほどして志願移動したんです。リクルートにはそういうFA制度みたいな仕組みがあって、行った先はHR(ヒューマンリソース)部門。新卒生向けのリクナビをやっていました。ここでは企画から運用まで全部やりましたね。運用と言っても、運用自体を企画するような感じでした。なにせ規模がものすごく大きいので、どういう運用体制で捌くのか、という視点が常に必要。どこかに事務所借りて、 120人くらいのセンター体制作って、こうやって捌いて……という話が必要になってくるんですね。

このHR部門がキャリア的には一番長かったのですが、最後あたりでは新規事業をやっていました。例えば、就活って時期的にかなり山があるんですけど、どうしても取り残される学生さんもいらっしゃるんですよね。なので「就活セカンドステージ」みたいな形で後半戦をしっかり作っていこうと。ウェブだけだとなかなか拾いきれないのでリアルでも学生に積極的にアプローチをかけていました。

当時はちょうどweb2.0なんて言葉がチラホラ出てき始めた時期で、mixiも流行り始めていたし、GREEもSNSに転換していった。新しい事業がどんどん出てきていた。そういった流れを見ていたんで、自社でもIT部門と企画部門の距離をもっと近づける必要があると考えたんですね。リクルートってわりと骨太なビジネスモデルに対して資源集中して成果を出していくタイプなんですけど、もっと柔軟性を持たせたかった。

そんなわけで、ITも企画も営業も横断的に見れるトップガン的な組織を作りましょう、そこに新規事業の組み立てをやらせましょう、と提案をしていたらその話に乗ってくれたのが元々いた情報システム部の上司だった。それで 元の部署に戻ったんですね。横断的な知識を持つ人材を育成して、傭兵のように各事業部に送り込んで半年〜1年で成果を出させる、そんな取り組みを始めたんです。

この頃はいろんな動きがありました。平行して投資組合の立ち上げにも関わりました。リクルートインキュベーションパートナーズ(現リクルートストラテジックパートナーズ)です。これでベンチャー投資を見るようになったんですね。また、リクルートとは関係ないところで私自身も会社も立ち上げました。ウィービットという企画・コンサル会社で、ここでは社外の新規事業案件のコンサルティングを行っていました。

結果、社外投資をやりつつ、社外の新規事業のコンサルをやりつつ、社内の新規事業の立ち上げに関わるという、けっこう珍しい状況になったんですけど、これだけ社内外いろいろやっていると結果論だけどいろいろ情報が入ってくる。シナジーが生まれる機会も増えてきて、これはけっこういい循環が生まれてきたなと感じました。

リクルート中の異端児が集まった

そうこうしていると、リクルート社内でも総合的にもっとウェブ部門を強化するべき、ネットにおける新規事業を力強く推進していくべきとの声が上がってきました。そこで立ち上がったのが、いまのメディアテクノロジーラボの前身です。局長 の木村稔さんと私の二人で立ち上げたのですが、どういう取り組みかというと、各部署にいるいきのいい若手・やる気のある人材を集めるんです。もちろん兼務にはなりますが。で、彼らは何かしら自分の仕事に対してもやもやしているんですね。もっとこうしたほうがよいのにとか、もっとこういうことをしたいとか。それをうまくアウトプットしていく装置としてこの組織を作りました。

- KPIなどはあったのでしょうか?

正直、やったことのないことに対してのKPIはやっぱり立てられないですね。あるのはプロセス目標のみ。年間に40サービス立ち上げるとか。α、β、あと卒業って感じで三段階に分けていたんですね。で、シードサービスとなるαを40立ち上げる、βに進むのが8本、そのうち2〜3本くらいがしっかり立ち上がればって感じでやっていました。

オフィスにもこだわりました。本社だとちょっと息苦しいので別のビルを志願して、オフィス内装も作りこみました。誰でも来れるようなオープンな環境にして、仕事で何か絡んだ人には自由に使ってもらえばいいじゃん、というスタンスです。いま思うと本当に個性的なメンバーが揃っていましたね。nanapiのけんすう、 ジーニーの工藤、KAIZENの須藤、ニジボックスの麻生、VCをやっている佐俣アンリ……。せっかく環境を作ろうとしているのにみんな親の心も知らずに「早く会社から独立したい」と言い続けるんです(笑)。

 

ECの会社がいつの間にか貿易の会社に

そんな彼らと接していると、負けたくないなという気持ちが出てきたんですね。いろいろと考えたのですが、もう一勝負するならいまだな、ということで2011年にリクルートを退職し、ゼログラという会社を立ち上げました。

- 若手に影響されたわけですね(笑)。ゼログラではどのような事業を展開されているのでしょうか?

ゼログラでやっているのは主にECですね。数珠つなぎ的にどんどん変わっていくのですが、まずはtoCで販売を始めたんですね。ラッピングなどのカスタマイズが豊富なところをウリにしていました。ただ、言ってもECの小売だとなかなかスケールしない。なのでtoBに振ってみました。会社の納会などで使ってもらうイメージです。

経営者の知り合いもたくさんいましたし、これがけっこういい感じになりまして、バルクで売れるのがやっぱり大きかった。 じゃあ、もっと母数増やせないかなと考えると次は海外になるわけです。売れ筋でお酒がずっと上位だったので、 お酒を海外向けに売ってみようと。そこでたまたま自分が好きだったこともあり、日本酒の輸出を始めました。香港で売っています。逆の流れにはなりますが、イタリアからワインを仕入れたりもしています。ECをやっている会社が、いまでは貿易をやっているんですね。

 

リアルに飛び込んでいく

世界まで広げた。そうなると次はどこに目を向けるか。ロジスティックなどになってきます。ここはかなりディープな領域ながら実際に飛び込んでみていろいろと勉強しまして。そして今年はついに製造までやり始めました(笑)。ECで売るものを作るようになってしまったんですね。個人的にはウェブって今後リアルとより絡むようになると思います。ラクスルだって 一生懸命リアルのところで開拓している。ウェブという接点を持ちつつ、リアルのソリューションまでワンストップでやるってことってとても重要だと思うんですよ。

例えばiPhoneケース。これ中国の生産工場では原価20円くらいです。これが中国で作ったものを検品、不良品を省いて国内流通で港まで運んで船で運んで関税かかって物流通して通関して倉庫に運んで保管してリパッケージしてバーコード貼ったりしてキレイな段ボールに入れ直して運んで卸・小売と流れていくと、そりゃ間にマージンがかかりまくって20円が2000円という見慣れた数字になったりするわけですよ。ここはウェブだけやっていてもなかなか根本的には解決できないですし、一方で本当にトライしがいのあるアプローチだと思いますね。

- 長友さんのお話をお聞きすると、実に有機的に事業を進められていらっしゃるなと感じるのですが。

そうですね。自分自身が絶対にこれをやりたい、というものがないというのもあるんですが、事業に対しては、ずらしていいところは徹底的に柔軟にいくべき、と考えています。逆にブレちゃいけないところは絶対にブラさない。例えば「日本酒をもっと多くの人に広めたい」という軸はブラしちゃいけませんが、「日本酒広めたいなら、香港でもいいじゃん」という視点はとても大事だと思います。あとは人。人とのつながりは本当に大事にしていきたいですね。いままで出てきた話のほとんどが人伝いでつながっていった話なので。人の思惑ってまた別々なんで、だったらその人に合わせる感じでアジャストしてしまってもよいのかなと思います。

 

(編集後記)

分かりやすい例でいくとウェアラブルコンピューター。テクノロジーにおいてもビジネスにおいても、ウェブとリアルはいろんな意味で徐々に近づいていると感じます。数珠つなぎ的にリアルのソリューションをひとつひとつ増やしていく事業展開は、今後様々なウェブに関わる事業に求められるひとつのアプローチではないかと感じました。

リクナビ他30以上のビジネスに関与!新規事業の青写真をジャッジ

株式会社リクルートにてHR・人材領域の事業開発および新規事業開発を担当。同社において投資組合にて新規事業投資を担当、のち全社新規事業開発室に所属。R&Dとして同社においてメディアテクノロジーラボを立ち上げ、数々のインキュベーションを行ってきました。新規事業立ち上げの中でもビジネスロジックを意識し、かつ運用やオペレーション、開発などを総合的に踏まえた検討が持ち味です。

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