事業をぐっと成功に近づける「正しいやり方」の作り方 ~失敗する原因のほとんどはそのプロセスにあり~

和波 俊久(Lean Startup Japan LLC 代表社員)

2014/11/12

「どんな事業をやるべきなのか」にはほとんど関わらない

-普段はどういうお仕事をされていますか?

Lean Startup Japanを主催しながら、プロセスコンサルタントという肩書きでクライアントの事業推進のお手伝いをしています。プロセスコンサルタントというと、日本ではあまり耳にする機会はないと思います。コンサルタントという役割ではあるのですが、私の場合はどんな事業をやるべきなのか、という点に関してはほとんどアドバイスはしません。その目標に対してどのようにしてアプローチしていくべきなのか、その過程の部分でいろいろとアドバイスさせていただく立場になります。

-プロセスコンサルタントについてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?

例えば新規事業を真っ白な状態で任された場合、まずみなさんが時間をかけて真っ先に考えることって「どんなものを作るか」ですよね。どういう商品にするか、どういうサービスにするか、最終的にアウトプットするプロダクトに考えが及ぶと思います。もちろんプロダクトをどう他社製品と差別化するかは大事なのですが、実はそこってその事業が実現するかどうかとは全く別なんですね。正しい目的地に着くためには正しいやり方を辿らなければダメなんです。目的地にうまくたどり着けるようにどうサイクルを作っていくか、そこをお手伝いするのがプロセスコンサルタントの仕事です。

例えば空飛ぶ車を作る、という企画を立てた場合。技術としてはもしかしたらいけるかもしれない。でも、ビジネスとして考えると様々な制約が出てきます。道路交通法も変わらないと難しいでしょう。ということはこの点だけ見てもかなり実際に車が空を飛ぶのはずいぶん先の話になる。ここに対して2年しか持たないような資金計画に基いてやる、っていうのは到底無理な話ですよね。

もちろん、これくらいのズレがあればさすがに誰しも「これはうまくいかないんじゃないか?」と気づけますよね(笑)。ただ、度合いの違いこそあれ、実際にこの手のズレがものすごく溢れているんです。普通にしていると気付けない微妙な差異。特にITの場合は顕著です。スピード感でズレてきますね。ITの分野だと、Twitterのように一度火が着くと急成長する場合が多々あります。立ち上げるコストも安いし、事業もハマればユーザー数は急成長。当然、短い資金計画に沿ってやってしまうことのほうが圧倒的に多いんです。期間が短いと当然、そのプロセスも期間に合わせて変わってくる。もう少しじっくり育てていくべきアイデアだったとしても、スピード感がそれを殺してしまうことは往々にあります。

成功エピソードは氷山の一角

実はベンチャーの戦いってほとんどが長期戦なんですね。本当に成功しているサービスって、サービスがリリースする何年も前から紆余曲折を繰り返し、地道に努力を続けていまの姿がある。ニュースやインタビュー記事で見かける話って、成功にたどり着く直前の数マイルを切り取ったものに過ぎません。なので、新規事業をゼロから立ち上げる場合に、“直前の数マイル”のときに活かされる知識って実はあまり参考にはならないんですよ。ダイナミックなグロース施策はどちらかというと既に得た何かしらの成功を拡大していく施策で、新規事業を創りだす際には修正することや小さな失敗を前提としながら進めていく「リーンスタートアップ」の考え方が大切になります。

-リーンスタートアップについてお聞かせ頂けますか?

以前、プロジェクトマネジメントを長い期間やっていたのですが、ITプロジェクトってよく失敗するんですね。いわゆる炎上案件が本当に多い。そこでわりと火消し担当というか、失敗しているプロジェクトを立て直すような仕事をやっていました。どうやるかというと、「やり方」を徹底的に整える。すると終電帰りが19時には帰れるようになったりするわけです。ちょうど同じタイミングで、「リーンスタートアップ」という言葉がアメリカから入ってきました。やっぱそうだよね、と共感することばかりで、いまもその手法を汲みながらコンサルティングを行っているという状況です。

リーンスタートアップで大切なのはプロセスです。先ほどからお伝えしているように、正しい目的地に着くためにどういった正しいやり方を踏んでいくかが重要なんですね。適宜修正を加えていけるようなやり方です。これがうまく回っているかどうかを調べる簡単な方法がありまして、「施策が効果があったのかどうかを測定するフローがあるかないか」である程度分かります。失敗したのか、成功したのか、その原因は何だったのか、これが分からない時点でいいプロセスは回せっこないですよね。私の事業のお手伝いもここに集約されます。このプロセスが回るようにするだけで、事業が成功する確度は一気に高まります。

もちろん、過程も大事ですが最終的に目指すものの形も大事です。どんなサービスを作るのか、ということですね。ただ、こここそまさに過程が大事で、徐々にアジャストしていく形を取ったほうがよい。「このサービスさえで実現すれば自分は成功する」と盲信することほど危険なことはありません。私も過去2回起業の経験がありますが、片方はまさにそう信じこんでしまって失敗してしまいました。

チャレンジはパンフレット一枚でできる

既存の事業と新規事業には決定的な違いがあります。新規事業は「投資」なんですね。既存の事業には正確性が求められます。ミスは許されない。ただ、新規事業は9つ事業を失敗しても1つの事業で10倍以上のリターンを返せればよい。いやいや、9つも失敗できない、と思うかもしれませんがこれって極端な話、パンフレット1枚でできちゃうことなんです。たとえばサービス紹介のパンフレットを1000枚くらいに配る。これで問い合わせがこなければニーズは見込めない。逆にいくつかリアクションが来ればそのサービスは何かしらのニーズを掴めている可能性が高い。完成品まで作りこまなくても、やり方を考えればある程度見立ては立てられます。それを繰り返すことによって徐々に正しい目的地に寄せていく。何も修正なしに完成品まで持っていく流れがいかに危険なのかがお分かりいただけると思います。

この話、実は組織のスタンスにも影響してきます。新規事業を投資と捉えられているかどうか。失敗を許容できる、ということが組織に求められるわけです。“必ず成功する”投資がないように、新規事業も一定のリスクは許容しないと成り立ちません。「1億円使っていいから絶対に成功して」よりは、「300万円しかないけどその中でどんどんチャレンジしてみて」という方が新規事業は圧倒的に生まれやすいです。どうしても金額が大きいとリスクを避けていく傾向にあります。提案側も期待値調整が必要で、「10億円あればGoogleを超えれます」という話だと「よし、絶対失敗するなよ」となる。でも、「これをやればGoogleのサービスの一角は切り崩せるかもしれません。100万あればちょっと検証できるのですが……」という話だと断然やりやすいですよね。正しいプロセスも固めやすいでしょう。新規事業を任されたのであれば、「やり方」に徹底的にこだわってみてください。着実に正しい目的地に近づくやり方ができているかどうか、もちろんこれが全てではありませんが、成功するためには決して外せない要因だと思います。

(編集後記)

正しいルートを通っていけば正しいゴールにたどり着く。考えてみれば当たり前の話だが、ビジネス上でこれをやるのはなかなか難しい。ましてや、正しいゴールも正しいルートもこれから作り上げなければいけない新規事業においてはなおさらです。だからこそ、一歩一歩正しいルートを進む「やり方」が必要になります。前に進むための修正や失敗を前提としたリーンスタートアップは、数ある考え方のひとつというよりは、正しいゴールにたどり着くための、もはや「定石」ととらえても差し支えない考え方になるのではないでしょうか。
 

成功の鍵は安く素早い効果検証、チラシ1枚で新規事業の構築を

自身2度の起業経験と、IT企業でのプロセスコンサルタントとしての活動を経て、2012年に"Lean Startup Japan LLC"を設立。日本の「トヨタ生産方式」を起源とするリーンスタートアップの考え方に基づいた新規事業支援を行っている。プロセスコンサルタントの視点を活かし「どのような事業を始めるか」ではなく「どのように事業を始めるか」にフォーカスした独自のコンサルティングを提供。著書に『ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?』(技術評論社)がある。

この記事に関するお問い合わせ、プロ紹介に関するご要望は「プロクル運営事務局」まで。