『GREEN FUNDING』に見る「堅実な攻め」と「万全の守り」 ~小さくスタート、計画的にピボット~

沼田 健彦(株式会社ワンモア CEO)

2014/12/10

 -現在、クラウドファンディングサービス『GREEN FUNDING』を手がけられていますがそこまでの経緯を教えて頂けますか?


大学ではマーケティングを専攻していました。東大の片平ゼミでブランドマーケティング。OBの方々も広告代理店に就職される方々が多く、自然な流れでしたね。教授の片平先生も「まずは体育会系のところで営業をやりなさい」と(笑)。

新卒で就職したのが広告代理店の電通です。はじめに担当させていただいたのがANAでした。メディアなどの媒体担当の営業と、クライアント担当の営業が分かれている部署もあるのですが、僕がいた部署は各人がどちらも担当するようなやり方でやっていて、個人的にはどちらの経験もできたのが大きかった。また、ANAさん始め航空会社はとにかくインターネットへのアプローチが早かったことも今思うと幸運でした。ネットで直販をやったほうが売上にきちんと届くんじゃないかという理解がお客さん側にあったんですね。効果測定もできますし。2005年くらい、まだまだネット広告が手探りという時期です。いろんな広告商品が次々と出てき始めていましたが、初めての事例などもいろいろ関わらせて頂きました。会社全体としてはまだまだマスが中心だった時期に、先駆けてネットってすごいなあと実感を持っていたわけです。 

「小さなコンテンツ」に応えられなかった

一方で、広告の引き合いも多いのですが、協賛依頼もたくさん来るんですね。広告費はもらえなくても、例えば航空チケット代だけでも協力してもらえないか、といった内容です。しかも、けっこう熱量ある方々から多く依頼が来ていました。まだまだ知られていないスポーツをもっと普及させたいとか、ものすごく切実に想いを伝えてくださるんですね。ただ、仕方ないのですが企業側の合理的なジャッジが入るのでなかなか実現することは少なかったです。ニッチなんだけど想いはめちゃくちゃ強い。こういう小さいけど力強い、「小さなコンテンツ」の熱量には、マーケティング費という範疇だとなかなか力になれないなとうっすらと感じるようになりました。

 -いま手がけていらっしゃるクラウドファンディング事業につながっていきますね


そうですね。当時はクラウドファンディングという形にまでは考えは及んでいませんが、いま思えばそこにつながるきっかけみたいなものをこの頃感じていたということになりますね。

入社して4年目のタイミングで部署異動がありました。個人的にはなんとしてもインターネットに関わる分野で仕事をしたかったのですが、「マスを経験しておきなさい」ということでテレビ局担当に。いまではけっこう変わってきているかもしれませんが、当時はテレビ局もインターネットとの連携などの話は皆無。自分の中ではかなり不本意だったんでしょうね(笑)。ちょうどその頃、知り合いが起業していてその事業内容にけっこう惹かれていて。マーケティング担当の役員候補を探していたということもあり、えいやと電通を辞めてそちらの会社へ転職しました。

 

「情緒的価値」がモノの売り方を変える

「イミオ」という会社だったんですが、やっている内容は国外からモノを輸入して日本で売る、いわゆる商社です。ただ、「商品に意味を」という理念を持っていて、フェアトレードのサッカーボールをパキスタンから輸入していました。ストーリーや付加価値のある商品を流通させる。ソーシャルベンチャー的な気質の強い会社です。と言うとけっこうかっこいいのですが、フタを空けてみるとなかなか厳しい。いわゆる在庫ビジネスのジリ貧状態です。長い時間をかけて、いろんな業者をかませて輸入するわけです。仕入れてからキャッシュが戻ってくるまで、半年、下手すると一年くらいかかります。キャッシュフローが悪く、在庫を持つというかなり「イケナイ」ビジネスモデルの典型でした(笑)。

ただ、苦しいながらもなんとかがんばり続けつつ、「おや?」と思うことがあったんですね。ファンションブランドとコラボしたサッカーボールを100個オリジナルで作ります、という企画をやりました。サッカー好きなファッションブランドとのコラボです。これが意外とあっさり売れた。また、有名アーティストとのコラボも行い、在庫持つのは怖い!ということで、受注予約で取ろうという話になりました。要は前金でもらうということですね。元々は800個の予定。それがいざ予約を取ってみるとなんと結果6000個。

-10倍以上!

そうなんです。サッカーボールは一見すると機能的なモノですよね。丈夫だとか蹴りやすいとか。そこに情緒的なエッセンスを入れるとサッカーボールは蹴るものではなく、インテリアだったり記念品になるんですね。これはいままで抱えていた悩みを解決してくるんじゃないかと思いました。「ストーリー」や「情緒的価値」をどうやって伝えていくか工夫すれば、広告代理店の頃にはお手伝いできなかった「小さなコンテンツ」や「熱い想い」を本質的に応援できるなと。

そこを突き詰めて出会ったのがクラウドファンディングの仕組みです。最初はクラウドファンディングを利用してサッカーボールの企画を実現する、という形でユーザーとして使っていましたが、徐々にその仕組み自体に可能性を感じてきて、それ自体を自社でやれないかなと。でもなかなか社内では理解されない。

-まだその当時、クラウドファンディングは一般的ではないですよね?

そうですね。いまでこそ日本でも当たり前になりましたが、2010年当時はその存在もあまり日本では知られておらず、得体の知れないサービスです。ネット上でユーザーからお金をプールする、というのも会社の事業としては少し抵抗ありますよね。イミオで実現したかったのですがなかなか難しい。ただ、可能性はめちゃくちゃ感じていた。なので自分でやることにしました。2011年の夏、起業という流れになります。 

猿マネでは消えてしまう

さあ、クラウドファンディングのサービスを立ち上げるかと準備を進めていた当時、ちょうどグルーポンを始めとしたフラッシュマーケ全盛期でした。同じようなサービスがたくさん立ち上がり、そしてたくさん消えていく、ある意味教訓になるような事象が起っていたわけです。海外にある既存のサービスを猿マネしてもすぐに消えるんだな……と強烈に感じるわけです。クラウドファンディングも同様だなと。

そんな状況の中、知り合いの会社がものすごく参考になる動きをしていました。フラッシュマーケのパッケージシステムを作って提供していたんですね。サーバーも自身で持っていて、ユーザー側はアカウントを発行するだけ。要はASPの配布です。さらに良かったのが、まとめサイトを作ったこと。フラッシュマーケティングのいろんな商品を紹介する。これも知人のうけうりなのですが「ゴールドラッシュが来たときに儲かるのは金脈掘り当てた人かツルハシを売る人だ」ということですね。

-プラットフォーム的な要素を持つということですね

そうです。じゃあツルハシを作るか、ということでクラウドファンディングの仕組みを作り、それを売るというところに目を付けます。ただ現実は厳しいもので、人もお金も技術もない。しかも、当時はまだクラウドファンディングは一般的ではないので、追い風もない。理解もされにくい。そこで、サービスのある程度の完成形を見つつ、その過程のピボットのポイントを予めある程度見立てておいて、最低限のところから始める。

まずはクラウドファンディングっぽいサイトをとりあえずひとつ作りました。『GREEN GIRL』という女性クリエイターの資金調達を応援するサービスです。かなりニッチですよね。要はこういう感じのものをみなさんやりませんか、とお客さんにも投資家にも触れ回ったわけです。これがけっこううまくいきました。IMJさんから出資を頂き、開発にも手が回るようになってきた。お客さんも増えてきたタイミングで提供先で掲載されているプロジェクトをまとめる『GREEN FUNDING』を立ち上げました。仕組みと集客の場をセットで提供できるまでになりました。 

意外と大事なのは「守り」

心がけていたのは、「攻め」以上に「守り」です。ベンチャーだと思い切りが必要なときもありますが、それ以上にベンチャーには慎重さが大事だと思っています。当然攻めも必要なので、「堅実な攻め」と「万全の守り」、このバランスがけっこうベンチャーには必要なんじゃないかなって思っています。もちろんサービスの競合はいますし、どうやって差をつけていくかは大事なのですが、ベンチャーなんて大企業の規模に比べればふとしたはずみで立ち行かなくなってしまう存在です。まずはミスらないこと。そして一軍から置いていかれないこと。ここをキープしつつ、新たなチャレンジをするように心がけています。

そんなことを意識しながら、いまGREEN FUNDINGでは2つのチャレンジを行っています。ひとつは海外展開。海外のクラウドファンディングサービスのIndiegogoというサイトの中に、Green Foundingの枠をもらっているんですね。日本から海外にチャレンジしたい人をここにアテンドしていく。うまくいくかどうかは分かりませんが、リスクを最低限に抑えつつ検証しています。もうひとつトライしているのが、「放送」とクラウドファンディングの組み合わせ。テレビ埼玉の番組と連携して、クラウドファンディングを絡めたアイドルのチャレンジ番組みたいなのをやっています。通販に近いイメージですね。これもチャレンジ。 

 

これからは「小さなコンテンツ」もおもしろい

象徴的な話で、GREEN FUNDINGでお金を集めているアイドルの子もラジオ局に紹介したら番組が決まったのですが。「私、ファンついているんです」と。実際にお金を払ってくれている応援者がいるんですね。ツイッターのフォロワーが何人、というよりもよっぽど説得力がありますよね。

ベンチャーキャピタルの出資を取るのにもピッチなどやっていますよね。人の気持ちを動かす、お金を出してもらうタイミングで、プレゼンテーションというのはとても大事です。どんなストーリーを提供するのか。コマーシャルにも近いかもしれません。クラウドファンディングだと、そのアピールの仕方で全然お金の集まり方が違うんですね。銀行などは気持ちでお金を貸したりはしませんが、クラウドファンディングではストーリーにお金が集まる。金融にも情緒的なエッセンスが含まれてくるわけです。「小さなコンテンツ」に光を当てられるサービス。そういったものを育てていけると、自分としては「カッコイイな」と思うわけです。 

(編集後記)

ベンチャー企業のウェブサービスだと、「伸るか反るか」という見られ方をしがちだが沼田氏のサービスへの考え方は全く真逆でむしろ石橋を叩くようなやり方だ。サービスの成長も、大胆な攻めより機会を伺いながら虎視眈々と、実直に育てていく。いわゆる「スタートアップ」らしからぬ緻密さと確実さは、沼田氏の信念を『GREEN FUNDING』というサービスとして具現化する過程での、大きな安定感を生んでいると感じました。

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