ブルーオーシャンには飛び込まないエウレカの事業戦略 ~420 万組のマッチングを作り上げた~

西川 順(株式会社エウレカ 取締役副社長)

2014/08/25

アメリカでは4000サービス以上!とにかく盛り上がっているオンラインデーティング市場

- pairsが属するマッチングサービス、市場はどんな感じでしょうか?

実は日本だとあまり知られていないんですけど、アメリカだと3組に1組がネットで出会って結婚しているんですね。『オンラインデーティング市場』と呼ばれる市場で、既にアメリカでは約4000ものサービスが出てきています。英語なのでユーザーの母数が多いというのもありますが、上場する会社が次々と出てくるくらい本当に大きな市場になっているんです。しかも細分化している。同じ人種同士だったり、ベジタリアンなど食の志向が同じ同士だったり、 同性愛者同士だったり。最近だと不倫限定のものまで出てきました。これは去年、日本にも上陸しましたね。とにかく非常に盛り上がってるんです。

ただ、アメリカで流行っているものをそのまま日本に持ってきても廃れていくこともけっこう多いですよね。ことさら恋愛や結婚など人間関係やコミュニケーションが深く関わる領域は国ごとの文化が色濃くでる領域なので、けっこうお国ごとに違ってくる。

じゃあ日本でニーズはどうなのかというところなのですが、日本の20代-30代独身男女の恋人がいない率、男性で77%、女性だと66%というデータが 。けっこう衝撃的な数字じゃないですか? 本当かなと思って社内で数えてみてもわりと当てはまってしまいました(笑)

- けっこう震える数値ですね……

こうした状況に対してpairsのようなマッチングサービスってひとつの有効なソリューションになってくるんですね。もちろん“ネットで出会う”ことにははじめは抵抗もあると思います。日本ではガラケー時代の “出会い系”のネガティブなイメージもあるので。習慣として定着するには地道な啓蒙が必要なんですが、とにかく強烈なニーズはあるよと。実際に、国内で累計330万組のカップルがサービス内でマッチングしています。加えて超高齢化社会で、日本の人口減少はどんどん進んでいく。キレイ事みたいに聞こえるかもしれませんが、少子高齢化が間違いなく進んでいる日本のためにできること、っていう意識もありますね。

 

Facebookページのファン数は800万人以上。その秘訣は「受託」にあり

- pairsを始める前はどんなことをされていたのでしょうか?

pairsの話にもつながってはくるのですが、2009年にエウレカを起業してから2年ほど、pairsを立ち上げるまでの2年間は受託業務を数多くこなしていました。これがけっこう自社サービスに生きているんです。基本的に『受託』ってやらされている感が強くなっちゃうと思うんですけど、実は捉え方によってはかなり恩恵があるんですね。それこそ自社サービスかのように徹底的にクオリティを上げてやると、自社のノウハウになるんです。受託ですから依頼される内容も様々で、どんどん幅が広がっていく。クオリティ高くやっていけば、任される量も増えていく。

pairsのFacebookページが800万いいね!以上ありまして、けっこう効率的にいいね!数を稼いでいるのですが、これも受託の仕事で培ったノウハウですね。これはほんの一例ですが、pairsには受託のときのノウハウがぎっしり詰まっています。ノウハウはたまるし、頑張れば当然売り上げも上がるので、 受託だから「やらされる」のではなく、「自分たちのサービスを作る」くらいの意気込みで 真剣にやらないと絶対にもったいないですよ(笑)

 

売上も大事だけど、売上よりユーザー

pairsも引き続きブラッシュアップし続けているところなんですけど、平行して『Couples』というカップル専用のコミュニケーションアプリをリリースしました 。恋愛軸ということで結果的にはpairsの延長線上にあるアプリになったのですが、白紙の状態から100個くらいアプリ案を考えて最終的に残ったものです。現在、リリース70日で既に40万ダウンロードを突破し、すごい勢いので伸びています。

pairsとは性質が違うので、いきなりマネタイズはないと思っています。プロダクトの質を上げて、ユーザーの満足度を上げて、そこからかなと。もうチーム全体で毎日毎日数字を見て、ユーザーの動きを分析して、とにかく ユーザーのことばっかり考えています。それくらい喰らいついていかないと、ユーザーって本当にすぐ離れちゃうんですよ。

 

ブルーオーシャンは狙わない。エウレカ流の新規事業の立て方

- 2つのサービスを立ち上げる上で何を考慮されましたか?

実はpairsもCouples、どちらのサービスも参入時には既に競合がいて、ユーザーをある程度抱えていてマネタイズもやっていました。 完全にウチが後発です。実はどこもやっていないサービスは意図的にやらないようにしているんです。既に競合がいる、ビジネスモデル的にもいけそうだ、でも「既存サービスはあと一歩、痒いところに手が届いてないよなあ」 という領域をに参入し 徹底的にプロダクトを磨き上げていき、市場を取ることを目指すというのが今のエウレカの戦略です。

新規事業となると、どうしても「いままでにないものを作ろう」という気持ちが先行してしまうんですが、エウレカではそこは競合がいようといまいと「既にニーズがある」領域での事業展開を意識しています。

競合を明確に見つけて、入念に分析をして、どれくらいの質と量でやれば競合を抜けるのかを逆算して、「行ける」と思ったら、 あとはただただユーザーのことを考えながら日々どれだけスピード感を持ってやっていく。これに尽きますね。徹底的にユーザーのことを考えて、執念でアプリに反映させ続けていく。もはや“怨念”に近い感覚なのかもしれません。神は細部に宿るじゃないですけど、そこにこそオリジナリティが出てくると思ってるんです。

エウレカでは、例えば社長の赤坂がCouplesのユーザーの反応を自分で分析してスタンプのデザインの指示出しをしたり、デザインも それこそ1px単位でチェックしてたりしていますが、メンバーはそれが違うと思うと「赤坂さん、それこうした方がもっと良いと思います!」と意見をちゃんと言う。ユーザーのためであれば社長も社員も 上司も部下も関係ない。『上司がこう言ったから』なんてエウレカでは理由になりません。全ての答えはユーザーにあると思うので、「他のことはどうでもいい、常にユーザーだけを見る」というのがエウレカがサービスを進める上でのポリシーです。


(編集後記)

西川さんの話をお伺いして強烈に印象的だったのは、新規事業を立ち上げる際の揺るぎない指針。主要な競合がやっているビジネスから少しズラして差別化を図るというのがひとつの定石ですが(このズラし具合がまた難しいのですが)、ここをニーズのど真ん中(かつ競合)にぶち当たっていく。このブレのなさと、あとはひたすらにユーザーを見続けるという、これまたブレのないブラッシュアップの指針がエウレカの強さなのではと感じました。

競合に勝つ!会員100万人「pairs」のソーシャルマーケティング術

大学時代にオランダ国立マーストリヒト大学で経営学を専攻。帰国後、ブルームバーグテレビジョンでのインターンを経て、雑誌取材記者に。その後、外資系ネット企業に入社し一貫してネットビジネスを行う。オールアバウト、サイバーエージェント、イマージュ・ネットでプロデューサーを経験後、株式会社エウレカを起業。現在は、事業のプロデュースだけではなく、労務、法務、人事、財務など、ベンチャーならではの「何でも屋」。

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