特許は武器になる!特許未開のスタートアップ業界を専門にする異色弁理士の頭の中

渡邉 大介(特許業務法人アイザック国際特許商標事務所 パートナー弁理士)

2015/09/09

事業づくりと特許は最強の組み合わせと語る渡邉氏。いままで馴染みのなかった特許への概念を浸透させるべく挑戦している。日本では珍しいスタートアップを専門領域としている弁理士だ。新規事業に特許取得を検討しないのはもったいないと語る、その理由を聞いた。

事業を生む瞬間から関わり、特許を持った強い事業を作る

-サービス内容を教えてください。

特許商標意匠の出願、活用、また、特許を含め強い新規事業を生み出すためのコンサルティングを行っています。他の弁理士の方と大きく異なるのは、特許出願ベースでの関わりではないというところです。通常の弁理士の業務は、事業がFIXしている中で、特許の部分の外注という状態が多い。私の場合は、事業が決まっていないところから関わり、特許を含め、事業作りからサポートします。ITスタートアップを多く担当しています。

-スタートアップに「特許」とは、あまりイメージがありませんでした。

人工知能やロボットはもとより、決済、ECのオプションサービス、ソーシャルゲーム、UI/UX、リアルとウェブのブリッジなどは、これからかなり特許を取れる余地があると思います。特に、真似のしあいになっているソーシャルゲームは可能性がありますね。機能で特許を取っていれば、ゲームがコケても使い回しができますし。革新的なビジネスモデルでなくてもいいんです。例えばオンラインショップのようなビジネスでも、購入率を高めるための一工夫、など、独自のサービスがあれば、特許を取れる可能性があります。

-スタートアップに可能性を感じたのはなぜですか?

自分事でいうと、学生時代から、スタートアップでインターンをしたり、その後も起業したりと、そもそも新規事業が好きです。自分も事業を行っているので、人もお金も足りないスタートアップでどのタイミングが勝負どころかなど勘所もわかります。また、普段からテック系メディアやスタートアップ系メディアで情報収集をしているので、勿体無いなと感じる機会が多かったのもありますね。日頃から情報収集をしているので、ご相談時に共通言語で話ができるのは喜ばれます。特許申請は、技術をいかに言語化できるかが重要です。ITスタートアップ周りの技術や、情報に日頃から触れていないと、正しい質問もできませんし、きちんと言語化できません。

技術でいうと、スマホの登場が大きいですね。パチンコ台の液晶画面ありますよね、あの小さい画面上で年間一社100〜200件の特許が取られています。スマホの画面は、パチンコよりずっと使われています。スマホ画面上の表現、たとえばUI/UXなどは、もっと特許が取れるはずなのにほとんど着手されていません。また、パートナー弁理士が、以前フリック入力にまつわる特許をマイクロソフトに売却しました。事業化を自分でしなくても、アイデアが価値になるのを間近で見たのも大きな転機となりました。

特許を持つことで、事業リスクが減り、海外へ挑戦しやすくなる

-特許をもっているとどんなメリットがありますか?

消耗戦の競争に巻き込まれないのが一番のメリットです。社運をかけた事業を真似され、やがて大きな資本を持った企業が参入し淘汰されていく。そのような消耗戦に巻き込まれにくくなります。また、海外進出がしやすくなります。日本の企業で海外戦略に成功しているところはまだ少ない。しかし特許があると、たとえ事業自体が行き詰まっても、事業売却や、特許売却で痛手を負わずに済むことがあります。上場以外のイグジットの手段があるというだけでも、リスクが減り、海外へ挑戦しやすくなると思いますね。

特許を含めた事業売却の概念はアメリカではかなり浸透しています。Googleやマイクロソフトなど、売却先がイメージできるからです。事業が赤字でも、かなりの額で企業買収が行われるニュースを目にしたことがあると思いますが、その内訳は、特許と技術と人材に値段が付いているようなものです。かつ、特許があれば、事業が信頼されやすいです。当社は海外特許も請け負っていますので、海外を見据えた相談も受けられます。

-今までの弁理士像とかなりイメージが違いますね。

スタートアップの領域に精通している弁理士は、日本にはまだ10人もいないのではないでしょうか。一般的に、弁理士は、大企業の特許出願を請け負うことが多い。大企業では、年間1000件程度の出願件数ノルマを課されていることが多く、現場の実務とかけ離れざるを得ない。出願だけしてそのままの特許もたくさんあります。しかし、大手の特許は、事業の防衛手段としては有益です。どちらが良いというわけではなく、私がたまたま、未開の難しい領域を専門にしてしまっただけですね(笑)。

特許出願と事業は、本来もっと近くあるべき。特許があると事業が強くなりますから。従来のとりあえず取っておこうという特許ではなく、生きた特許を増やしていきたいです。事業作りの根幹として必要不可欠なものにしていきたいと思っています。法務部門が関わるものとしては、一番会社のバリュエーションに影響を与えるのが弁理士の業務であるはず。しかし今はそのイメージはありません。啓蒙活動がまだまだ必要ですね。

-どのような状況でご相談すればよいですか?

アイデアベースでも構いません。生のフロー図を持ってきていただいてもいいですし、固まっていない仕様でも大丈夫です。部門でいうと、マーケティングと開発の方と話すことが多いですね。特許が取れるか否かだけではなく、さらにビジネスも育つ方法は、と一緒に考えるよう心がけています。プロダクトファーストの意識が強いスタートアップ業界ですが、世に出てしまったら特許性がなくなってしまう。勝てると思うアイデアが浮かんだ際は、まずご相談ください。また、既に世に出したサービスであっても、追加機能に特許性がある場合もあります。既存の事業をもう一段上にあげたいと思っている方も気軽に声をかけて欲しいです。

スタートアップ特化の特許・商標戦略のプロフェッショナル

京都大学教育学部卒。大手特許事務所、ユニ・チャーム株式会社知財法務部、コンサルティングファームを経て、弁理士として独立。また、自らもスタートアップ起業として美容・健康の当日予約サービス「careL(ケアエル)」の運営を行う。弁理士としての専門性だけでなく、起業家としての目線も含めたスタートアップ・中小企業向けの知財サービスを提供する。

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