星野リゾートで培った、ホテルや旅館が生き残る方法、「売れる商品」と「売るプロモーション」の作り方

冨山 浩一郎(コンサルタント)

2015/10/07

星野リゾートにて生み出したノウハウを活かし、不況にあえぐ地方の宿を再生に導いている冨山氏。単価が上がらない、部屋が埋まらない、従業員のモチベーションが上がらない、多くの旅館業者が抱える悩みの解決策を聞いた。

旅館業に蔓延するプロダクトアウト偏重の考え方にマーケットインの考え方を取り入れる

−今のスタイルにいたった経緯を教えてください。

新卒で入った外資系の広告会社では、まずクリエイティブブリーフと呼ばれる広告の設計図を作ることが仕事にとりかかる基本でした。広告制作にあったって、消費者がどういう課題をもっているか、自社商品はどういう強みがあるか、何を伝えるかを徹底的に書き出し作り込みます。新しい施策を行うときも、クリエイティブブリーフを元に説得しなければならない。本当にお客様のためになるのか、の絶対的な指標となります。ここではマーケットインの考え方を叩きこまれました。これはウェブ活用や、メディア掲載を目指す際も非常に役立ちますので、必ず作るようにしています。 

日本の旅館業は、長くプロダクトアウトでやってきたたので、マーケットインの考え方が薄い。ハコもの発想が強いですね。持っているものをどう使うかという発想に寄ってしまっている。結局、食事に和牛を付け、カニも付け、という横並びの豪華な料理で、選ばれるのを待つ競争になってしまう。持っているものを磨くことも、もちろん悪いことではないのですが、宿には多様なお客様が来るということがあまり考慮されていません。同じ商品でも人によって価値が違うのです。例えば、マンションの1階の物件を防犯面で嫌がる人と、貴重な庭付きだと喜ぶ人がいる。自分が提供できるものに合うお客様を見つけられたら、高層階より安くする必要はない。待つのではなく探すことで、競争に巻き込まれず勝てる。コンサルティングにおいても、そのような提案をしたいと思っています。

−宿がお客様を探すという発想は意外ですね

実は旅館業だからこそできる勝ち方です。旅館業は出せる商品のパターンが少ない。だからこそ、狭いターゲットにぶつけ、お客様を探すというニッチ戦略も可能になります。私が手がけた長野の旅館の例でいうと、そこは団体旅行の全盛期だったころに出来た旅館でしたが今は、団体旅行が減り、少子化、核家族化で、二、三名の旅行がスタンダードです。通常は、食事を豪華にして単価を上げる戦略になりがちですが、それでは黒字にできない。そこでフィットしている団体客を探すことに注力しました。減っていますが、バス会社の社恩ツアーや、老人会の旅行など、団体旅行は存在している。ハコにフィットした顧客を探すことで、利益は回復しました。団体旅行を探すのもテクニックがいりますし、自社リソースを割くのも難しいでしょうから、そこは上手く手を組み、サポートできればと思っています。コンサルを入れて赤字になっては意味がないですから、お互いメリットのある組み方を考えたいと思っています。

顧客、従業員、協力者、関わる人すべてのためになるのか、を徹底的に見つめる

−お互いにメリットのある組み方、具体的に教えてください

星野リゾートにいた頃、リゾナーレ八ヶ岳にショッピングゾーンを作る計画に携わりました。当初は、全国のショッピングセンターに入っているような店舗にお声がけしていたのですが、交渉は難航しました。1日150万人が往来する駅ビルに入っているような店舗様にとって、年間で150万人しか集客がない八ヶ岳は、魅力的ではなかった。自分たちが来て欲しい店舗ばかりをイメージしていたのですが、相手の立場に立って、お互いがWin-Winとなる考えが抜けてしまっていたのです。 

改めて、クリエイティブブリーフを作り、入居したいと思う店舗ってどこだろうと徹底的にかんがえました。一気に構想を変更し、地元にある店舗に声がけを始めました。八ヶ岳は、こだわりを持っている個人店が多いです。店舗の方にとっては、こだわりのある八ヶ岳から離れず集客できる。僅かな店舗移転なので、従業員を新たに雇う必要もない。都心にある店舗に入ってもらっていれば、従業員を揃えるのも難しかったでしょう。

−なるほど、まさにWin-Winのショッピングゾーンですね

はい、そしてお客様のWinのために、「大人のためのファミリーリゾート」を目指しました。親・子、どちらの求めることを考え、子供が冒険をできるなど、参加したくなるキッズプログラムに取り組みました。もし、親のことだけを考えるなら、託児所を作っていたでしょう。しかし、子供が参加したくなるプログラムを作り、子供にも楽しい思い出を作ってあげることで、親も罪悪感なく心からゆっくりできますよね。子供が楽しめるプログラムを充実させることが、大人のために繋がる。関わる人全てがWinで繋がっていくことを意識しています。

従業員に成功体験を積ませ、自走できる集団を作る

−改革において従業員からの反発はないのでしょうか?

初期は当然あります。ただこれも同じで、従業員の方が幸せになる方法を考えていくようにしています。過去やったことでいうと、売上を従業員に還元する仕組みを作ったり、地域社会に貢献してもらう仕組みを作ったりしましたね。一例をあげると、スパ併設の施設を作った際に、意欲のある従業員にはスパ施術の研修を受けてもらいました。仲居の業務と、施術者としての業務が出来るようになり、賃金の向上と、待機時間の減少による労働時間の短縮に繋がった。従業員のモチベーションが非常にあがりました。 

さらに、自信が付けば、お客様から褒めて貰う喜びとして戻ってきます。トップやコンサルの言っていることはわかるけど日々の仕事で忙しい、という声に悩む人は多いでしょう。しかし、課題は気付いたときに直していくことが必要。従業員にも成功体験をしてもらうと、自走できる集団になり、反発ではなく協力してくれるようになります。

-富山さんには、どのような状況でご相談すればよいですか?

私は、星野リゾートの星野社長に誘われ、旅館業に入りました。直前は、外資系メーカーで経営企画やブランドマネージャーをやっていました。旅館業に魅了され、今も携わっていますが、業界で積み上げてきたわけではないので、逆に俯瞰して見られると思っています。旅館業に関わる人が、競合他社や、異業種のノウハウに触れることは非常に少ないと感じますが、最近伸びている宿泊業は異業種から参入したところが多い。中にいると、何がトレンドか、どこが悪いかに気付けないことも多いので、外からの目を取り入れて欲しいと思います。オペレーションが悪いとか、企業文化がダメとか。組織づくりがダメとか、課題がわかっていれば、それ専門のコンサルティング会社がある。しかしなかなか可視化されてはいないでしょう。なんとなく停滞感を感じる、危機感を感じる、そんな想いがある場合は総合窓口だと思って、ご相談ください。

旅館ホテルの再生には、「売れる商品」と「売るプロモーション」が必要です

首都圏の外資系広告会社、外資系メーカーでマーケティング、ブランドマネージャー、経営企画を経験後、星野リゾートに入社。各リゾートの現在まで続く様々な企画の基礎作りに従事後、多くのホテル、旅館の再生を行いました。「顧客目線」を大切にしたマーケティングと、ブランドマネジメントで培った「商品企画力」「経営力」を元に、あなたの旅館、ホテルにあった再生策をご提案いたします。

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