次のスタンダードを創り上げる「共創」の視点 ~パラダイムシフトを見逃すな!~

山崎 晴生(株式会社インデックス・アイ 取締役副社長)

2014/09/03

- 山﨑さんはクロス・マーケティングの立ち上げメンバーでいらっしゃいますが、その経緯を教えていただけますか?

社会人になってまず、工学部出身ということもあり福岡のマンションデベロッパーに就職しました。今とは本当に畑違いですね。で、当時のITバブルの波に乗って東京に出てきてインターネットメディア事業に携わりました。そうすると間もなく見事にバブルがはじけて(笑)。当時はネットコミュニティを立ち上げ、その中で広告、EC、リサーチの3事業をやっていたのですが、バブルが弾けた後にこの中で芽が出そうだったのがリサーチ事業でした。そこでリサーチ事業を担当していたのがクロス・マーケティング代表の五十嵐さんです。僕はコミュニティの運用を担当していました。ちょうど2000年くらいの話です。

当時、マクロミルさんやインフォプラントさん(現在はマクロミルに承継)がネットリサーチ市場を作り始めていたころですが、従来のリサーチ業界内ではネットでリサーチができるとは思われていなかったんですね。まだまだ紙や電話での調査が主流の時代です。でも、ネットを使って調査をすれば紙や電話より断然安くて早い。どう考えても流行らないわけがない。間違いなく起こるパラダイムシフトだと考えていました。そんな確信もあって、クロス・マーケティングという会社を五十嵐さんとアルバイトの子と3人で立ち上げました。五十嵐さんが営業、私がリサーチの実施・運用、そしてアルバイトの子がアンケートの画面を作るという役割でした。

- まさにスタートアップですね。

そうですね、今でこそクロス・マーケティングも上場して大きな企業になっていますが、当時はまさにドベンチャー。しかも、ネットバブル後ということもあり、出資等は募りませんでした。そこは五十嵐さんがベンチャーキャピタル出身ということもあり、低いバリエーションで外部資本を受け入れることほど高いものはないと考えていたので。おかげでお金がなくて(笑)。

 

お金がない!から生まれた「共創」モデル

お金がないとお金がないなりに工夫しないといけません。まずはリサーチ事業で必要不可欠なものが「パネル」です。リサーチの対象となるモニター組織をパネルと呼びますが、普通であればここは自社で抱え込むのが一般的です。でも、それには当然膨大な募集コストや維持コストがかかります。それで僕らはこの部分をインターネットメディアに費用をお支払いして会員組織をお借りする形を取りました。それもパネルの利用に応じて費用をお支払するプロフィットシェアモデル。まさに苦肉の策でした(笑)。

はじめはECナビさん(現VOYAGE GROUP)、その後クレディセゾンさん、楽天さんと続き、どんどんパネルを拡大していきました。この拡大のスピード感は自前でパネルを増やしていたら実現できなかったと思います。でも逆にお金があったら、自前で会員を囲っていたかもしれませんが、結果としてはこれが正解でした。短期間で業界最大規模のパネルを構築したことで事業成長に大きなはずみがつきました。

相変わらずお金のない僕らですが、営業スタイルも金欠が影響していました。潤沢な営業リソースがあればリサーチの依頼主であるメーカーに直接営業をしていたと思います。それが調査業界ではスタンダードなスタイルでした。しかしそれでは営業効率が悪いので、間に入っている調査会社さんにターゲットを絞ってアプローチしました。リサーチの仕事は調査会社に集まっていましたから。おまけに僕らはリサーチのノウハウがほとんどなかったこともあり、そこを教えてもらいながら一緒に仕事をする道を選びました。調査会社への提案の言葉は「僕らが貴社のネットリサーチ部になります!」でした。当時まだ調査会社もネットリサーチが主流になるなんて思っていないところがほとんどで、よく分からないネットリサーチには積極投資はせず、外部に委託した方が都合良かったんですね。

結果、ネットメディアや調査会社など、その分野を得意とする皆さんと一緒にやるという選択をしたことで、クロス・マーケティングは人・モノ・金のどれひとつなかったにもかかわらず急成長を遂げることができました。

 

 

ソーシャルメディアがもたらしたパラダイムシフト

その後2008年に上場して、2011年に転機が訪れました。ソーシャルメディアの普及です。FacebookやTwitterによって企業は生活者と直接対話を始めました。ここにもまた、大きなパラダイムシフトがあると感じたんですね。以前は紙からインターネットへの「手段」の移り変わりでしたが、この時期からの流れはもっと根本的なものです。たとえば企業がFacebookページを通して、ファンと直接対話したり、アンケートをお願いしたり、それもほとんどコストをかけずに。これまでの調査は調査会社の名前で行われることが一般的で、企業名が表にでることはほとんどありませんでした。これは、従来の調査が客観性を何よりも重視してきた結果です。

一方でソーシャルメディアを介した企業とファンのコミュニケーションは、お互いに顔が見えていることもあり、調査というより友達同士の対話に近いものです。その中で注目したのが、2008年にアメリカで誕生したMROC(Market Research Online Community)という調査手法です。簡単に言うと、オンラインコミュニティに特定のテーマに関して興味関心の高い人を集め、対話、傾聴、アンケートなどを通してニーズやインサイトを探っていきます。

MROCは、これまで行われてきたグループ・インタビュー(数名で行われる座談会形式のインタビュー)と比べると、対話の期間が長い、場所に縛られない、対面ではないので本音が出やすいなど、メリットを挙げればきりがないんです。あと、日本人は特にネットにモノを書くのが好きなので、長期間に渡ってコミュニケーションしていくと如実にホンネが出てきます。ここに気付きがたっぷりあるわけです。

リサーチの主流が紙からインターネットへシフトしたのと同じように、調査の相手も調査会社からモニターを借りる形から、直接企業が顧客とコミュニケーションしていく形にシフトしていくと感じました。それで当時、MROCの事業化を検討したのですが、モニター調査をコア事業とするクロス・マーケティングの中で、自己否定とも受け止められかねない顧客調査への注力はなかなか居心地が悪くて。結局、僕自身が会社を飛び出す決意をしました。周囲に気兼ねしてやりたいことを我慢できるほど大人ではなかったということです(笑)。

MROCは日本には市場はなく、海の物とも山の物ともつかない代物でした。そんな妄想レベルの話でも共感してくれたのが、いま所属しているインデックス・アイ代表の小田です。すっかり意気投合して、長年お世話になったクロス・マーケティングを辞めて、インデックス・アイに移りました。

ただ、新しい会社に移ったのはいいのですが、実際にMROCをやってみて大きな壁にぶつかりました。これまでのネットリサーチは、謝礼の提供によってモニターとの関係が成立していたため、モニターをもてなすとか、喜ばせるといったエンゲージメントの視点はありませんでした。しかしMROCの参加者は、企業にとって最も大切なお客様です。アンケートを依頼するだけの関係にとどまらず、また、そこで何らかの失礼があれば大切なお客様を失うことにもなりかねません。MROCではリサーチのスキル以上にエンゲージメントのノウハウが不可欠となるのです。当然のことながら、僕らも例に漏れずエンゲージメントのノウハウはありません。そこで僕らが救いの手を求めたのが、当時、ソーシャルメディアマーケティングの分野では日本一の会社である(と僕が勝手に思っていた)トライバルメディアハウスの池田さんです。リサーチが進化する、エンゲージメントが重要になる、新しい市場が生まれると、思いのたけを池田さんに伝えたところ、「一緒にやりましょう!」とその場での即断即決をいただきました。


- 調査会社の方々にリサーチのノウハウを教わっていた頃と近いものがありますね。

近いですね。全部自分たちでやるのか、そこの分野に強い人たちと一緒にやるのかは経営方針にも依りますが、これからはもう全部自前でという時代じゃない、お互いの会社がノウハウを出し合って新しい価値を作っていく時代だと思うんですよ。いまではトライバルメディアハウスさんとは資本業務提携を行い同じオフィスに移りました。いまでは日常的に行き交って、僕らはリサーチのノウハウを、彼らはソーシャルメディアのノウハウを持ち寄って新しい価値を創りあげるべく日々、走り回っています。

 

これからの事業に欠かせない「共創」という視点

新しい事業を進めるときには異なる強みを持った者同士で作り上げていく「共創」の視点が今後より大事になっていくと思います。大企業であれば自前主義の道もあるかと思いますが、ことスタートアップに関していえばなおさらです。激動の時代においては、お互いの強みを活かすことで得られる時間の短縮が何よりも重要だと思います。

また、異業種の会社と共創することで得られるもうひとつのメリットは、外から見ると「なんでこの人たちこんなことに気付かないんだろう」とか「なんで知らないんだろう」ってことってたくさんあるんですよね。ものすごく魅力的な価値を持っているのに、当人たちはその価値に気づいていなかったり、当たり前だと思っていたことが実は他社では貴重なノウハウだった、とか。外の人のほうがよく分かっている、ってことはかなり多い。これらをお互い見つけ合えるっていう関係は、事業を育てる、成功させる上でひとつ重要な要素になっていくと思います。


(編集後記)

これからの価値を作るのはなかなかに難しい。特に新規事業を任されると、どんどん視野が狭くなっていきがちです。そのときに山﨑さんが提言する「ビジョンへの共感」と「両者の強み」を生かした「共創」という関係性があったらどうだろう。きっと視野も可能性もぐんと広がり、いままで気付けなかった何かも生まれやすくなるでしょう。これだけソーシャル化が進んでいる世の中。ビジネス上でもソーシャル的な関わり合いがひとつの重要なファクターになっていくと感じました。

答えは顧客の中にあり!最先端のリサーチ技術で事業をサポート

2003年株式会社クロス・マーケティング設立と同時に取締役就任。同社のサービス開発を担当。2008年東証マザーズ上場。2011年MROC(Market Research Online community)をサービス化。2011年MROCに特化すべく同社取締役を辞任し、株式会社インデックス・アイ取締役就任。2012年国内初となるMROCプラットフォームをリリース。『次世代共創マーケティング』共著。

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