マタニティメディア『ニンプス』に見る有機的なメディアの作り方~妊婦の3人に1人が読者!~

高沖 清乃(株式会社ポーラスタァ 代表取締役)

2014/09/17

- ニンプス立ち上げの経緯をお聞かせいただけますか?

編集やウェブプロデュースなどいくつか会社を経て、わりと明確に妊婦さん向けのメディアをやりたいなと思っていたんですね。子どもが生まれてからのいわゆるママ向けのメディアはあったのですが、当時は「妊活」なんて概念もなかったですし、そもそも妊婦さんをターゲットにするのが理解できないとまわりには言われていたんです。そんなわりと直感で立ち上げたのがいまの株式会社ポーラスタァです(笑)

さてメディアを作るぞと立ち上げたはよいのですが、いきなり受託で忙しくなっちゃって。嬉しい悲鳴なんですけど、当時はウェブの編集をやれる会社は本当に少なかったんですね。なのでありがたいことにお仕事には困らなかったんです。そこから自社メディアのニンプス立ち上げまではまるまる2年ほどかかりました(笑)私自身の妊娠が大きなきっかけになりました。

実際に自分が妊婦になって働いてみると、当たり前なんですけど気付かされることがたくさんあったんですね。働く女性は、妊娠中にどんな服を着て仕事をすればよいのか、食べられるものが制限される中どうやってランチを乗り切ればよいのか、分からないことだらけ。もちろんウェブで検索すれば妊娠に関する情報はありましたけど、働く妊婦に関する情報はゼロではないにせよほとんどないんです。そういった情報がどこかにまとまってほしいな、と思ってニンプス立ち上げの準備を進めました。

- まずはご自身がほしいサービスだったんですね(笑)

自分の中でもずっと温めていた企画ではあったので、何となく直感的にビジネスにできるなとは思っていました。もうひとつ背中を押すデータがあって、前々から総務省の出生に関するデータとかを調べてたりしてて、数字を見てみると「ああ、働く妊婦さんってけっこう多いんだな」と推測できるんです。当時はその気付きまででしたけど、3年後にまた見直してみると、「ああ、あのとき思った通りやっぱり増えてきている」と。働くママが増えるぞ、これはサービスとしていけるんじゃないか、そんな直感と、客観的なデータからの背中押しで立ち上がったようなものですね。

ツールとしてのウェブメディア

- ビジネスとしてはウェブメディアの広告モデルになるのでしょうか?

ニンプスなのですが、ウェブメディアはどちらかというと集客ツールとして捉えてて、実は「冊子」のスタイルでうまくやれればなと考えていました。昔、雑誌の編集者をやっていた時期があるんですけど、一般の書店を通さない直販スタイルだったんですね。逆に言うと、この売り方しか携わったことはないんですけど。しかも総務担当の方が買ったりするようなtoBの雑誌だったんです。となると、わりと定期購読メインなんですよ。これはビジネスとしてはとても安定している。編集部にいたのに、この“仕組み”にけっこうインパクト感じちゃって。なのでニンプスでもウェブメディアは当初あくまでも集客装置で、マネタイズポイントとしては定期購読などをわりとメインで考えていました。

実はこの定期購読のスタイル、妊婦向けの情報だと相性がすごくよくって。妊娠4ヶ月目の方と妊娠8ヶ月目の方が欲しい情報だと全然違いますから。定期購読だと、購読し始めたタイミングからその人の時系列にそって号を送れるんです。読者さんも毎年変わっていきますし、このタイミングをキャッチするっていうのはこの領域だと特に大事ですね。

ちなみにウェブメディアが集客装置と言いましたが、これはこれでとても大事な要素です。常に心がけているのが、各コンテンツに意味合いを持たせること。「この記事は検索からの流入のために」とか「このコーナーはファン作りのために」とか、サイト内のコンテンツには全て意味合いを持たせています。先ほど述べた「ウェブサイトは集客用」「冊子は課金用」という切り分けも同じ考え方ですね。

2、3年スパンのものから短期的なものまで。ポーラスタァの4つの種蒔き

- ニンプス以外の事業は取り組まれているのでしょうか?

4、5年ほどはずっとニンプスを育てていくフェイズだったのですが、比較的サイトの規模もユーザー基盤も安定してきたのでちょうどいま新しい種を蒔いているところなんです。全部で4つあって、いろいろトライアル的な要素も多かったりするのですが、並行してバタバタ進めています。

1つ目は『Ca-san(カーサン)』。これはニンプスのユーザーに出産後も引き続き読んでもらえるようなママ向けのウェブメディアです。ニンプスのユーザーはスマートフォンが9割。ここ2年で一気に変わりました。そうなると、今後検索の流れが変わってくるんじゃないかと。スマートフォンだとおそらくパソコンに比べるとそこまで検索しないと思うんです。となると、調べなくても来てもらえる場所をうまく創りだす必要がある。そういった存在としてCa-sanを作っていますね。なんとなく5年後あたりを見据えつつ実験的にやっていこうかなと。

2つ目はキュレーションボックス。簡単に言ってしまうと福袋のようなものですね。マタニティ向けのいろいろなグッズが詰まっている。既存のユーザーをマネタイズにつなげたいと考えているんですけど、単純にユーザーからの購買でビジネスするのではなく、企業さんのプロモーションを絡められないかなと思っています。

3つ目はシンプルなんですけど書籍です。産後すぐ1ヶ月間ってあまり知られていないですが外に出れないんです。赤ちゃんはもちろん出れないですし、母も出産でけっこうなパワーを使っちゃっているんですね。で、これから子育てでいろんな知識が必要になるのに本屋に行けない。そこを提供できないかなと。会員の方々の出産の時期はある程度取れているので、産後のタイミングで配布することもできる。このタイミングを押さえられるのは強いですよね。

4つ目はフォトブックです。フォトブックを作るサービスは他社でもたくさんありましてアレコレ試しに使っているんですが、いざ作ろうと思ったら画像の選定がけっこう大変なんですよね。いま私たちで進めているのは、赤ちゃんが生まれてからすぐに使えるフォトブック用アプリで、日々子どもの写真を撮るだけでそのままフォトブックになっちゃうというものですね。これも出産のタイミングを押さえられているところがそのまま生かせます。

- こういった企画はどのように練られているのですか?

これら4つの新しい取り組みは正直、アイデアの源泉は直感だったりします(笑)その後、ユーザーとなるママさんたちに検証のためにヒアリングをかけます。社内もみんなママさんだったりするので議論は多いですね。で、しっかりとトライアルなりに時間軸を考えます。これは2、3年くらいは様子見つつだなとか、これは短期的にビジネスが成り立たなかったら厳しいな、とか。コンテンツにしても新規事業にしても、それぞれに目的をしっかり持たせるのは本当に心がけていますね。どれかの芽がうまく出てきてくれると嬉しいですよね。

(編集後記)

ウェブメディアをやっているとどうしてもウェブの中でマネタイズをするんだ、そのためにPVをひたすら稼ぐんだ、という思考に陥りがちなのですが、高沖さんの話を聞いていると実に柔軟な思考の中でウェブメディアをうまく活用されているなと感じました。ウェブにも紙にも、ウェブの中の各記事にも、新しい取り組みにも、全てに売上やPVだけじゃない「役割」を明確に設けるところも、いろんな取り組みを有機的に進めていける要因になっていると思います。

妊婦の3人に1人が読むメディアを立ち上げ!事業育成のプロママ

マタニティ情報サイト「ニンプス」を開発および運営。「ニンプス」は現在、国内の妊婦さんの3人に1人が利用するサイト。マタニティサイトでは、国内2位のユニークユーザーを保持しています。雑誌・web・フリーペーパー・イベント等、目的に応じたメディアの新規開発およびマーケティング。Webでは、記事量産等せずとも、ユーザーが定着するサービス構築を得意としています。

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