ボランチ的事業推進のススメ~何でこうなのか?何でやるのか?を突き詰める~

増澤 貞昌(株式会社鎌倉新書 執行役員)

2014/09/24

- 増澤さんの今までの経歴を簡単に教えてください。

まず、新卒入社でリクルートに入り、フリーでエンジニアをやった後に、2000年にギガフロップスという会社を立ち上げました。モバイルのコンテンツを作る会社です。その後、その事業は売却、2006年にシゲルという会社を立ち上げました。ここもモバイルコンテンツを作る会社だったので、モバイルのサービスの企画だったり立ち上げだったりをずっとやってきた感じですね。

そして、いまは鎌倉新書で様々な事業を見ています。鎌倉新書はお墓やお葬儀、お仏壇といったエンディング関係の情報を扱う会社で、取り扱う商品自体は今までと全然違うのですが、実はネットでの情報提供に力を入れています。なので、自分としてはいままでやってきたこととそこまで大きな違いは感じていません。ネットでTシャツを売るのか、お葬儀のサービスを提供するのか、の違いだけですね。

- 立ち上げられてきたサービスの中で印象に残っているのはどのようなものですか?

シゲルの頃は年間2〜3つのサービスを作っていたのですが、中でもモバイルを使ったクイズコンテンツはけっこうヒットしました。クイズに答えると商品がもらえるというものなんですけど、そのモデル自体はダイヤルQ2の時代からあったものです。ビジネスモデルとしては全然新しくない。モバイル領域ではまだどこもきちんとやれていなかったんです。それでチャレンジしてみることにしました。

まずは、クイズの量産をいかにしてやるか。普通にクイズ会社に頼むとかなりお金がかかります。だいたい1問1,000円くらいなので、1万問作ろうと思うと1,000万円。さすがにこのリスクは背負えない。そこで大学生に協力してもらいました。AとBの2つのチームに分け、片方はクイズの作成、片方はクイズの検品を行う。制限時間20秒のクイズシステムなんですけど、調べてすぐに答えられるものはNGなんですね。AKBのあるメンバーの誕生日とか。あと、変わってしまうものもダメです。日本がいままでに取った金メダルの数などもよくないですね。

すっかり人気コンテンツになったので、今度はこの仕組み自体を売り始めました。クイズサーバーを用意して、フロントサーバーをASPで貸してカスタマイズできるようにしたんです。こうなるとどうなるか。競合サイトが増えていくので次第に広告費の競争になってくるんですね。多くのモバイルサイトを運営する中で、成功するためにはいかに広告費を払わないで集客するかが肝だ、と感じていたんですね。それで、他人が僕のために広告費を払ってくれる仕組みを作りたいと考えていました。ASPでシステムとコンテンツのネタを提供するこの座組みなら、この仕組みを使っている人たちが勝手に広告を出してくれる。僕は広告費をかけずにコンテンツからのあがりを受け取ることができる、というモデルを作ることができたわけです。いつも、そういう広がりを考えながら、企画を考えていますね。

そもそも何でこうなってるんだっけ?

- 企画づくりのコツなんでしょう?

コツというわけではないんですけど、昔から何かを分析して原因や問題点を明らかにして、という作業は好きでした。自社サービスの傍ら、コンサルティング業務もやっていました。なので、他社で成功しているモデルはその種明かしをいつもするようにしていますね。仕事とは別にブログ(それ、僕が図解します。)を書いていたりするのですが、これはけっこうおすすめです。ブログを書き始めると、自然といろんなニュースや情報をネタにできないかな?と考えてしまうんですね。無意識のうちに情報に敏感になりますし、表層的なところだけでなく本質的なところに目が行きます。ブログに書く過程もけっこう重要で、自分の中で整理されるのでただの情報がしっかりと血肉になるんです。

例えば、昨年度のオリエンタルランドの決算発表。表層的な数字だけ見るとものすごい営業利益を出していて、ディズニーファンも「儲け過ぎでしょ!」となって終わるわけですが、もう少し噛み砕いてみるだけでずいぶんと違う見え方になります。実はこれほどの営業利益を出したにも関わらず、オリエンタルランドの株価はこの後下がったんですね。その答えも決算発表の中に盛り込まれていて、今年度は30周年だったので売上が跳ねたのと、来年度は大型の設備投資を入れるので営業利益は下がると。

もう少し深堀りしてみましょう。なんで株価が下がるまでの大型投資を行うんだ、という話になりますが、オリエンタルランドの経営理念は「ハピネスを届けたい」なんですね。これを実現するために、「あるタイミングでこれだけの投資を行えばお客様に新しいハピネスが届けられる」という計算から導き出されているんですね。

とまあ、このニュースひとつ取っても、オリエンタルランドがどうビジネスと向き合って自社のゴールに向かっているか、いろいろ気付かされることがあるんです。

- どのような事業が成長するとお考えですか?

まず前提として、うまくいかない事業のほうが圧倒的に多いんですね。そこで成功するかどうかは何よりも「やりきったか」に尽きると思います。僕もいろいろ事業を作ってきましたが、やりきれなかった事業もたくさんあります。一時期モバイルのブックマークサービスを検討していたのですが、準備に1年間くらいだらだらとかかってしまい、結局実現はしませんでした。これは今でも悔しい。けっこう反省していますね。

じゃあどんな事業ならやりきれるのか。これは人によって違うとは思うんですけど、僕の中では「すごく儲かる事業か」「(失敗したとしても)自分の成長を実感できる事業か」「仲間と一緒にやれる事業か」の3つのうち、2つがハマっているとだいたいやりきれるんですね。

そもそも何でやるんだっけ?

- 事業を進める上でどのようなことを心がけていらっしゃいますか?

今、鎌倉新書ではいろんな事業を見る立場にいるのですが、ひとことで言うとボランチの役割だと思っているんですね。会社のゴールがどこなのかは社長という監督が示します。売上目標だったりするわけです。それをうけて、マネジメント層は現場に向かって「前に蹴れ、前に蹴れ!」と言い続けるんですけど、実際にボールが落ちてくる現場になると、「あれ?前ってどっちだっけ?」ってなりがちなんですよ。

真正面はディフェンダーが構えていてなかなかパスは通らない。右サイドに流すか左サイドに流すか、一旦後ろに預けて後方から攻め上がるか。そこの道筋を示すのが僕の役割。メンバー各自が「前に進めている」と実感を持って走れる環境をいかにして作るか。事業を進める上では、自分が日々やっていることと最終ゴールがちゃんと結びついていることって、この上ない推進力になると思うんですよね。まだ誰も見たことのない新規事業を作るのなら、なおさらここが重要になってきます。何でやるんだっけ?に常に答えられる状態を作る。ひとつ、事業を推進していく上での有効な方法だと思います。

(編集後記)

新規事業を進めていると、ゴールが見えてこなくなることがよくあるります。サッカーに例えた「前へ」の話がとても印象に残ったのは、そういった新規事業で陥りがちな悩みに依るところが大きいでしょう。企画の作り方ももちろん大事ですが、ボールを着実にゴールに近づけていく事業の進め方も同じくらい、実現するという意味ではそれ以上に大事な要素なのかもしれません。

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